開発物語

輸送品質と輸送効率向上を実現したシーソーパイプ編

矢野が変わった、動いた。発案から3日目に設計開始。『それじゃあ、消防署に行って聴いてみようではないか』と言い出した事自体が、画期的なことだった」と佐野進治事業部長が当時を振り返る。 タンクローリ事業部佐野 進治 取締役事業部長

佐野部長がタンクローリ事業部に着任4年目の平成23年。
「今年の東京トラックショーにタンクローリを出展せよ」という命が下ったところから始まる。 トラックショーの4か月前の8月5日、技術方、製造方、営業方が一堂に会しての“バリューアップ会議”が開かれた。

そこで、出た話。石油輸送タンクローリからガソリンスタンドの貯蔵地下タンクに荷卸しした後、油を完全に出し切れず、配管に残油が残ってしまう。何とかならないか―」。問題=ユーザーニーズは確かにありそうだ。

しかし、技術的には大丈夫なのか?―

「航空機給油車で使用しているスイベルジョイントを応用できるはずだ」。
航空ローリを担当していた力丸清美理事の一言で開発の方向性は決まった。翌6日の営業会議に掛けると、即、東京トラックショーへの出展が決定した。そして、翌々日の8日には設計が始まった。

バリューアップ会議からたった3日。(株)矢野特殊自動車でも異例の早さだった。

課題は、タンクローリから貯蔵庫へ油を注入する配管を斜めに下げると全部出し切って配管の片側に残油を残さないようにすることだ。

前述のスイベルジョイントを基幹の中央につけ、配管を左右いずれかに上下傾斜させて残液が溜まらないように工夫した。アイデアありきなので設計は早かったが、この配管固定装置は消防法に抵触しないだろうか?という問題が発生した。 石油という危険物を取り扱う製品については厳しい消防法があり、メーカーとしては扱いにくい製品なのだ。

そんな時に出たのが冒頭の発言だ。 「それじゃあ消防署に聴いてみようではないか」。 とにかく一歩踏み出してみよう―。 「これまで(株)矢野特殊自動車にはなかった“攻めの精神”だ」と佐野事業部長は感じたという。

自分たちの中で何かが変わりつつある―、と。

タンクローリ事業部技術部力丸 清美 理事

福岡市消防署に4人で出かけて行き、シーソパイプの配管固定装置の説明をした。案件はさらに消防庁へ。2か月後、「所轄消防署の判断に一任する」との回答が戻ってきた。

バリューアップ会議から2か月半 製造部の徹夜が続き、東京トラックショーの10日前に車両が完成。何とか間に合わせることができた。

シーソーパイプ(V型シーソー配管)付タンクローリとは

移動タンク貯蔵所(タンクローリ車)には荷卸しを行なう為の、排出配管が車輌の左右及び後部にあります。通常、排出配管は固定する事と規定されており、荷卸し後の残油防止対策には限界が有りました。

そこで、今回考案したV型シーソー配管は左右の排出配管を可動式(遊具のシーソーの様に)にする事によって、この残油問題を解決する事が出来る構造です。配管に傾斜を付ける事で、配管内の油の流れを格段に良くし、残油を限りなく減らす事に成功しました。

残油が無い為、異種荷卸し時の混油を防ぎ、輸送品質の向上を図ることで、運送会社様、荷主様及びスタンド経営様からの信頼を獲得する事が出来ました。
特徴として、

01 残油がない為、異種荷卸し時の混油を防ぎ、輸送品質が向上します。02 荷卸し作業終了後の残油回収作業が不要で、静電気による災害を防ぎ、荷卸し作業の安全性が向上し、荷卸し時間の大幅な短縮で配送効率がアップします。 03 左右配管をV型にする事で、左右配管からの油が後方配管一か所に集まり、後方荷卸しがスムーズになります。さらに、作業後の左右配管吐出口部からの残油回収作業が省けます。

以上の特徴をもったV型シーソー配管で、残油ゼロ・混油ゼロ・心配ゼロを実現した石油輸送タンクローリ車です。

残油回収時の安全性がアップ。業界標準を目指せ

初の納入先であり、当社と古くからおつき合いいただいている地場大手の石油輸送会社殿が元売りに推してくれることになり、元売り本社にてプレゼンテーションも行なった。

回答は「3年間実証試験を見たうえで決めましょう」というものだった。さらに10万回耐久テストも要求された。11日間でこれをやってのけた。そうこうするうちに“シーソー配管”はさらに “V型シーソー配管”に進化した。

結果、荷卸し場所の傾斜に左右されずにどちらかでも残油が溜まることもなく、メイン配管の最後部分に残ることもなくなった。残油回収による危険作業も不要になり、静電気による災害を防ぐことができるようになった。

シーソーパイプの特徴を車体に表現。矢野彰一社長がシーソーパイプの名づけ親である
安全性を厳しく求められる石油タンクローリの配管口

「この製品は傑作だ、と思った」と佐野部長。規制が厳しい業界だけに、消防庁のお墨付きを貰ったのも同然。「もっとたくさんのユーザーに見てもらおう」と営業に弾みがついた。

量産化できれば、コストを小さくすることができ、価格問題も改善できる。販売した後の3か月毎の点検を続けて、「異常なし」を確認できた。

顧客からは「混油がなくなり品質がよくなった」という反響も出てきた。車輌研修などで来社されたお客様も工場で製品を見て「ぜひ欲しい」と。航空ローリの顧客も高評価をしてくれた。

さらには、他社の営業マンも「これは凄い」とほめてくれた。「どうだ」と笑みがこぼれる佐野事業部長。
九州の大手石油販売会社をはじめ、年に数台の割合で受注を獲得していった。

V型シーソー配管の導入により、残油がなくなり異種荷卸し時に混油を防ぎ品質が保てる。残油回収作業が不要になり安全な上に、作業時間も大幅に短縮し効率がアップする。

(株)矢野特殊自動車が掲げる「輸送品質と輸送効率向上の技術パートナー」を実現したV型シーソー。「“業界標準”になることが目標」と力丸理事。

市場の反応もゆっくりだが上々だ。サービス事業部も部品販売を1つの事業アイテムとして動き出した。また、タンクローリ製造の受注を増やすだけでなく、特許許諾というかたちでの市場拡大も視野に入っている。

V型シーソー左右出し配管(特許取得済) 残油ゼロ、混油ゼロ、心配ゼロを実現した